Beast Love
殴られた場所に軽く手を触れると、微かに血が付着した。


指先から視線を上げれば、大層なバッドや鉄パイプを持った男が、数人並んでいる。


「おいおい、城之内ぃ。女とヤらしてくれるって言われて来てみれば、ゴリゴリの男しかいねーじゃんかよ」
「なに? 城之内、そういう趣味があんの? ウケるー」
「また厄介ごとかよ。勘弁してくれよマジで」

派手な見た目や社会から逸脱している風格からして、年上ばかりな印象を受ける。


「ち、違うんすよ先輩〜。ちょっとこの男のせいで、女の子が逃げちゃったんすよ〜。シメてくれませんかね? 代わりの女の子は、ちゃんと用意するんで」


ごく当たり前に交わされる会話内容に、コイツらがいかに腐っているかが分かった。


分かったからこそ、ポチの泣き顔が瞼にチラついて、余計に憎らしく感じた。



「あー、正義の味方気取りってやつ?」
「今どき、そんなピュアなやついんの? 笑うわ〜」
「夢見る坊やには、夢から覚めるような刺激が必要だなぁ?」


河川敷に、コンクリートと引きずられる鉄パイプが擦れ合うカラカラと乾いた音が響く。



ニヒルな笑みを浮かべて歩み寄ってくる男たちに、応戦体制を取る。


早速、なんの挨拶も無しにバッドを振り下ろしてきた相手の攻撃を交わし、みぞおちに一発くれてやった。


「ゴフッ、なんだコイツ……強えぇ……」


次に素手で勝負を仕掛けてきたヤツの拳を手で受け止め、背負い投げをお見舞いする。


宙を舞ったあとに大きな衝撃が背中を突き抜け、男は短い呻き声を上げてその場に踞る。

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