Beast Love
「お前ら、本当に口ばっかりだな」


開戦前から勝負の行く末は分かりきっていたが、弱すぎる。


最後のひとりが鉄パイプを持って、俺に殴りかかろうとしてきた。


いつもの反応速度なら、余裕でかわせる……はずだった。

(……くそっ、またかよ…………)


心臓が大きく跳ね上がり、例の”アレ”が俺の身体の動きを鈍らせる。


(こんな時に、限って……)


僅かに避けるのが遅れた右わき腹に、勢いの乗った鉄の塊が叩き込まれた。



「っが、……!」


ドッドッドッ、と早くなる鼓動を抑えつけて歯を食いしばれば、腹部に走った激痛に目眩が誘われる。



一瞬の隙をついて、再び鉄パイプが俺の頭を直撃した。



言うことを聞かない忌々しい身体は、コンクリートに打ち付けられる。


確実に作られた傷口からは、涙のように血が溢れ出してくるのを感じた。




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