Beast Love
「城之内ぃ、とりあえずシメたぜ? 早く女を紹介してくれよ」


倒れた俺に興味がなくなったのか、男は鉄パイプを地面に放り投げた。


が、城之内がそれを拾い上げ、心臓の発作で動かなくなった俺に、殺意を向け始める。


「くそっ、どこのどいつか知らないが、調子に乗りやがって!」


力の加減というものを知らなさそうな城之内に対し、周りの男たちが「おい、これ以上は流石にそいつ死ぬかもよ」と制止をかけるも、走り出した殺意は止まらない。



俺はただ、ボンクラに成り果てた身体を恨みながら、朦朧とした意識で他人事のようにそれを見ている。


……嗚呼、こういう時に限って、消防活動で命を落とした誠司さんの言葉を思い出す。


『誰かを救いたい』という想いは、時に奇跡を起こすのだという言葉を。


世の中は、そういう風にできているんだと。



「おい、城之内! マジでやめとけって!」
「あーあ、俺は知らねーぞ」



奇跡ってのは、俺の前に現れてくれたか?



俺はまだ、その答えを……………



(ポチを救ってやれたかを、まだ…………)



無機質な鈍色が振り下ろされようとした、その時だった。

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