Beast Love
白虎町くんたちは、「お熱いふたりにとっての邪魔者は、さっさとお暇しますわ」と言いながら、踵を返す。
「……マサトの身体が調子悪いのも事実やけど、こんな熱々な君らを見るのを嫌がってここには来てないなんて、言われへんに決まっとるやん」
人混みの雑踏の中、白虎町くんは伏し目がちに何かを呟いていた。
「じゃぁ、天音さん、トオル。花火大会、楽しんでね」
玄武くんは表情をまったく変えずに、ただ私たちに手を振り遠ざかっていった。
……結局、マサトがどうしているのかは分からず仕舞いだった。
(いやいや、私はなんでマサトの心配なんてしてるんだ?!)
楽しい時間を前にして沸々と湧き上がってくる不要な心配を振り払おうと、頭を小さく振りかぶっていると。
「天音さん、手を出してくれる?」
夜によく似合う色をした浴衣を着たトオルくんに手を差し出された。
おずおずと手を重ねると、ギュッと強く握り締められる。
「今日は絶対にこの手は離さないつもりでいるけど、天音さんも俺から離れないつもりで歩いてね」
私を大切にしてくれる彼の優しさを前にして、心臓が早く鼓動する。
初めて男子とデートをするという少しばかりの緊張と、興奮と。
「じゃぁ、行こうか」
トオルくんが醸し出す温かな雰囲気に、安心感を覚える。
「うん、楽しみだね」
その中に混ざる少しの痛みは、気のせいだと自分に言い聞かせた。