Beast Love
「ちょっとマサトくん、これ以上はぁ、」



だらしない顔をして涎垂らしてる女を他所に、締め付ける胸の苦しさを嚙み潰しながら白い肌に噛み跡を付ける。


「……うるせぇ、」


さらに力を込めれば、悲鳴にも近い喘ぎ声が鼓膜を揺さぶる。


心臓が、破裂しそうなくらいにポンプしている。


部屋に満ちる鬱陶しいくらいの香水の香り、肌を滑り落ちる汗、醜い呼吸音。



すべてが重なり合ったところでやっと、俺は”生きている”んだと、実感できる。



はち切れんばかりに膨らみ続ける思いが、胸の中で暴れだす。


花火の輝く音が煩くて、仕方ない。




ノゾミには俺がいなくても、平気だ。





でも、俺は……



─『さぁ、つまんない事言ってないで、さっさと家まで送ってよ、ご主人様』─



─『……助けてくれて、ありがとう……』─



ノゾミじゃないと、ダメだ。



美女を前にして思い出すのは、今ごろ彼氏と花火を見ている、口が減らないやつのことばかりで。





(……嗚呼、もうどうでもいいか)



すべての思考を放り出し、浅はかな快楽に身を委ねた。

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