Beast Love

少し夏の暑さが残る真っ青な朝空の下、少女の声が響き渡る。




「どぅえぇぇぇぇ?!! どうしてこんなことになってるの?!!」


教室から持ち出した椅子をグラウンドまで運び、各クラスごとに分けられたテントの下に辿り着いた私は絶叫していた。


原因は、手元に配布されたプログラムの用紙。


私が出場するのは、二人三脚。


相方は、ハルカくんのはずだった。




なのに、なんで……それが、……



「鳳凰 正人と、入れ替わってるの────っ?!」




なんと私の相方はあの暴君であるらしい。



「あれぇ? おかしいね、ノゾミちゃんは僕と一緒に走る予定だったのに。いつから変更になったんだろ〜?」


前髪に林檎のピン留めをつけたハルカくんが、横で首を傾げている。



「なんっ、なんで……っ。体育祭こそは、文化祭とは違って平穏無事なモブ少女でいれると思ってたのに……っ」


……おお神よ、貴方はなんと無慈悲なのでしょうか。


何ゆえ、私にこのような試練をお与えになるのでしょうか。



荒れ狂う胸にそっと手を当てて、天を仰いでいると。




「あっはー! マジで入れ替わったまんまじゃん! ウケる〜〜」


前方からなにやら意味ありげな、鬱陶しい笑い声が聞こえてきた。



声の主は転校初日に絡んできた金髪ヤンキー、笹原で。
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