Beast Love
「ちょっと、今の発言は聞き捨てならないんですけど」
ズイッと一歩前に出れば、明らかな難色を示される。
「ああん? なんだよ、おブス。俺様に文句でもあるのかよ」
「あるわよ。このプログラム、アナタが書き変えたんでしょ?」
ピラピラとプログラム用紙を揺らせば、鼻で笑われてしまった。
「はんっ、だったらなんだって言うんだよ。別にいいじゃんか。鳳凰のヤツ、今日も学校来てないみたいだしよぉ」
欠席者が出た場合、同クラスの生徒が競技に参加しなければならない。
マサトが今日も学校を休むのならば、私はプログラム変更前のまま、ハルカくんと参加できる。
「うぐっ、……確かにそうだけど……」
「どうせ今日も休みだろ、鳳凰のヤツは。大方、女と遊び歩いてんじゃね?」
「お、女と遊び歩いてる……」
体育祭に来ないでそんなことをしていたら、それはそれで複雑な気分だ。
(……って、違う違う! なんで悲しい気分になってるんだ、私!)
「と、とにかく、あんまり人に迷惑かかることはしないで」
自分が何を言いたかったのか不明瞭なってしまった私は笹原にそう一言だけ忠告し、引き下がってしまったのであった。