Beast Love
(な、なんで今、コッチ向いたの? 私のこと見たの?)



不意に、後ろからポンッと肩を叩かれた。


「ひゃぁっ?!」


ビクッと肩を上げながら振り向くと、そこには制汗剤のCMに出てきそうなキラキラとした日差しを浴びている、トオルくんがいた。


「ご、ごめん。そんなに驚かせるつもりは……。二人三脚、頑張ってって言おうとしただけだよ」


あまりの眩しさに片手で日差しを押さえる。


「あ、うん。ありがとう」



トオルくんの微笑の裏には、私がマサトと走ることへのモヤモヤとした感情も含まれていそうだった。


けれど、彼はあえてそのことは口に出さず、手をグルグルと回してこう言ってくれた。


「マサトは人に合わすってことを知らないからなぁ。天音さんが逆にアイツのこと、振り回してやればいいよ」、と。



それは彼なりの冗談だと、分かっていた。



「うん、そうするよ。ありがとう」


だから、そう答えるに留めておいた。
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