Beast Love
二人三脚
待機場所に向かうとペア同士の生徒たちが「緊張するね」、なんて談笑を交えていた。
(……私も別の意味で緊張するなぁ……)
体操座りで縮こまっていると、周りから黄色い声が湧き上がる。
……鳳凰 正人だ。
彼がこちらに向かって歩いてきているだけで、観衆は声を上げる。
「あぁー、暑っ」
とくに誰に言うわけでもなくそう零しながら奴は、私の隣にドスンと腰を下ろし、あぐらをかき始めた。
「…………は、シカト?」
続いて発せられる言葉に、先ほどのこの蒸し暑い天気への感想が自分に向けられたものだと理解する。
「え? 話しかけるなら主語をつけて頂けますでしょうか?」
「そりゃ悪かった。ポチ、今日も暑いな」
前後に座っている同級生からは、「ポチって呼ばれてるよあの人」「犬みたい」っとクスクスとした笑い声が。
(ああ、やっっぱり極力喋りたくない、この俺様不良クンとは!)
ひそひそ声に不愉快になり、気持ちを紛らわせるために空を凝視する。
「………………はー、今日も暑い」
「おい、またシカトか? いい度胸してんじゃん」
城之内の件で助けてもらって少し見直していたのに、どうしてこうも憎まれ口を叩いてくるかなぁ。
「シカトされたくなかったら、私のことを名前で呼んで頂けますか?」
それに…………、最近になって学校を休みがちになっていることも、聞きたかったのに。