Beast Love
「あーあ、どうせならもっと可愛い女子と二人三脚したかったぜ」

あぐらをかいてガックリと肩を落とす男子に、現実をよく見ろとクギを刺す。

「残念でした。ウチのクラスには他には男子しかいませんので、マサトくんの下心丸出しの欲望が叶うことは、一生ないでしょう」


……違う、言いたいのはこんなことじゃない。


「まぁ、お前と走るくらいなら小羊と走る方がまだ目の保養にはなるわな」


「むきーっ!! もう、競技前なのに喧嘩売ってこないでよ!!」

(……なんだかマサトの顔色をよくよく見たら、夏休み前より白い気が……)



今みたいな雰囲気では、とてもじゃないけどそんなことは聞けそうにもない。



いつだって貴方は、自分のことには踏み込むなど言わんばかりに防衛線を張っている。


私にも、ちょっとくらい……心配させてよ。


「こんな調子じゃ、私たち最下位だね」


プイッとそっぽを向けば、砂埃を発生させながら遠くのカーブを走るランナーの姿が見えた。



ランナーが真っ白なゴールテープを割り、1位通過を知らせるアナウンスと声援が、爆発的に大きくなる。


耳鳴りがしそうなくらいの声援の中、うまく切り返せれない心が砂埃に塗れていくような気がした、その時。



「……嘘だよ。ノゾミとペアになれて正直、嬉しいよ」

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