Beast Love
泣きそうなくらい、胸がきゅんと痛くなる。
「えっ、」
周りにいる生徒たちは、リレーの勝敗で熱に浮かされ、誰ひとり私たちに意識を向けている者はいない。
「今の、どういう意味で……」
彼の言葉の真意を探そうとする、自分がいた。
答えて欲しいと願ってしまう、自分がいた。
時間が止まって、透明になっていくような感覚。
一挙一動に振り回されて振り回されて、トオルくんのことが霞んでいってしまう。
ねぇ、心配だけさせてよ。
私に……こんな気持ちにさせないでよ、馬鹿マサト。
「別に? 深い意味はねぇよ」
素っ気ない答えとは裏腹に、マサトの微笑はどんな言葉よりも多くを語っていた。
「でもこれで、俺たち1位取れそうだろ? やるからには勝とうぜ、天音」
最後に苗字で呼ばれて、さっきまでのことすべてを突き放されたような白い虚無感が、私を覆い尽くす。
振り回されて、振り回されて。
泣きそうなくらいに、切なくて。
「おー、やっと名前で呼んでくれた。うん、そうだね。頑張ろ〜!」
見栄を張って作った笑顔が、心が、飽和していく。