Beast Love
「……俺は、俺は、……わずかな可能性を信じてでも、マサトみたいなえぇヤツに、生きて欲しいだけや! お前もそうちゃうんか、トオル?!」



鳳凰 正人が夏休み明けから学校を休みがちになってから、本当は青龍院も薄々気付いていた。



……もう彼は、長くないのではないかと。



「 天音ちゃんがマサトの側におったなら、もうアイツはあかんのやって!」


前に進めていた足を止め、青龍院が振り返る。

「……譲れるなら、もうとっくに譲ってる」



揺れる心と、譲れない天音 希の笑顔が交互にちらつく。



「それができないくらい、天音さんのことが好きなんだ。悪い、ヨウ。その案には協力できない。でも、俺も、……マサトには生きてて欲しいって、思う。ははっ、矛盾してるな、俺……」


「トオル…………」


どうすれば正解に辿り着けるのか、そもそもこの言い争いに正解はあるのか。



彼らはまだ、出口のない霧の中を歩いている。



しかし、彼らの会話を盗み聞きしている者がいた。



「ふぅーん。天音って子、人気のある青龍院くんと付き合ってるんだぁ」



夏祭りの夜に鳳凰 正人と一夜を過ごした、セフレの栗木 杏奈である。
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