Beast Love
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乾いたピストル音によって、二人三脚のスタートが切られた。
日光で土が焼ける香ばしい香りの中、息が風に溶けていくような早さで走る。
ただひたすら、走る。
「かーっ、ポチ公それ本気の走りか?」
「う、うるさいなぁ」
デクノボウの方に腕を回して体勢が不安定なため、とにかく走りづらい。
独走していた筈が、周りの生徒たちとの距離がどんどん近付いてきている。
「もういい、肩から腕下ろせ。代わりに腕組むぞ」
乱雑に腕を解かれ、絡ませれば肌と肌がぴったりと密着する。
(うおぉぉ! 汗が! 汗かいてるのに! 恥ずかしい!)
……でも、確かにさっきよりは走りやすくなった気がする。
「うん、これ走りやすいね。ありがと、このままトップを走って……………………って、マサト?」
急に、ぐらっとバランスの崩れる身体。
「うわわっ!」
勢いに負けて私も一緒にバランスを崩す。
《おおーっと! ここでトップを独走していた赤組チームが転倒です! 白組、巻き返しなるかぁ?! 》
実況係の声が、まったく耳に入ってこない。
それよりも地面に片膝をついて手で顔を抑えるマサトが心配で、たまらなかった。