Beast Love
おでこにゴツン、っと指が当たる。


「あだっ!」

「全校生徒の前で女に肩借りるなんて俺様のダッセェ姿、見せれるかよ。自分で走れる」


マサトに小突かれた額に、変な熱がこもる。


おでこを両手で抑えながらキョトンとしていると、腕を組み直された。


「よっしゃぁ! ここから白組の奴ら追い抜くぞ、ポチ!」


強がって笑うマサトの笑顔が、頭上から降り注ぐ日光に照らし出され、キラキラと眩しい。


眩しすぎて、いまにも消えてしまいそうな。


眩しさは正反対だけれど、カレイドスコープの帰り道の夕暮れの中で見せた、あの雰囲気そのもの。


カレイドスコープの帰り道で見せた儚さを例えるならば、光が弱くなっていく風前の灯火の線香花火で。


今の彼を例えるなら……灯火の落ちる直前、最後の力を振り絞って光を強く放つ線香花火。


(お願い、やめて。そんな姿、見せないで)



再び立ち上がり前に進もうとする彼を前にして、私に拒否権などなかった。


「望むところよ! 白組負かして、私たち赤組が勝利を掴む! 前進あるのみ! 次、コケたら置いていくからね!」

「はっ! 上等だぜ」


二人三脚、息を合わせて走り出す。


酸素を吸い込むタイミングも、二酸化炭素を吐き出すタイミングさえも重ねていく。


マサトと心をひとつにして前に進んでいくこの瞬間が、とてもかけがえのない時に感じた。
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