Beast Love

女子生徒に連れられ、駐輪場まで足を運ぶと。


女子生徒が言った通り、トオルくんがいた。


しかし、トオルくんともうひとり……すごく可愛らしい顔立ちをした女子生徒がいた。


「あれ、どういうこと……? 私は、青龍院くんに天音さんを呼ぶように言われたから、言われた通りにしたのに……。天音さん、ちょっとあそこに隠れよう?」


私を連れて来たポニーテールの女子生徒は、近くの茂みに隠れようと誘導してくる。


私はワケが分からないまま、言われるがままに植木の後ろにしゃがみ込む。


(トオルくんは、私に用事があって呼び出したんじゃないの? なのに、どうして他の人とこんな場所でふたりっきりでいるんだろう?)


「あ、……あの女の子って、栗木 杏奈さんだ……。天音さんは、栗木さんのこと知ってる?」


「ううん、知らない……」


「栗木さんは、桜島高校のマドンナって言われてるほど男子から人気のある人だよ」



トオルくんの前に立つ栗木 杏奈さんは、可愛くて愛想が良くて、男子生徒のほとんどは栗木さんのこと狙ってるらしい。


けれど、彼女と付き合える男子は選び抜かれたイケメンしか無理なのだそうだ。


(……うーん。そんな栗木さんがトオルくんと一緒にいるってことは、トオルくんを狙ってるってことなのかな?)



ポニーテールの女子生徒がそこまで説明してくれたその時……、トオルくんと栗木さんの唇が、重なった。



「えっ、」
「あ、み、見ちゃだめ」


隣にいたポニーテールの女子生徒に両目を覆われ、視界が真っ暗になる。
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