Beast Love


両目を覆われてから、それからのことはあまり覚えてない。

ただ、ポニーテールの女子生徒に手を引かれ、そのままそこから離れたのは覚えている。


そして気が付けば、体育館の入り口付近にある下駄箱の裏にいた。


「ご、ごめんなさい。私、言われた通りにしただけだから……」


ポニーテールの女子生徒はそこまで言うと、なぜか私を放置して外に出て行ってしまった。


外の活気とは程遠い静寂が、辺りを包む。

空っぽの頭を振り絞り、現状を理解しようと必死に思考を動かす。


(な、なんでトオルくんが他の女子とキスしてたの? えっ、ワケが分からない。私、どうしたらいいの?)


下駄箱の裏でへちゃばり、腰を下ろしていると。



「あははっ! 彼氏に捨てられた惨めな子がいる〜」


甲高い嘲笑が、私を突き刺す。


顔を上げると、下駄箱の向こう側からこちらを見下ろす女子生徒がいた。


先ほど、トオルくんとキスをしていた栗木 杏奈さんだ。

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