Beast Love
ここに1枚のシャツが、あったとして。


左の布がわたしで、右の布がトオルくんで。


ふたつの布を繋ぎ止める絆が、ボタンというもので。



どこからか、かけちがえたボタンは……そのまま直されることはなく。


ひとつの絆の終着点まで、かけちがえたままで。


いま、終わりを迎える。


「じゃぁ、残りの競技も頑張ろう、天音さん」

トオルくんは力なく笑うと、体育館を後にした。


ひとつ、ボタンがズレていたと気付いた時には、もう最初からボタンを外して、止め直していくしかないのだ。


どれだけ苦労しようが、時間がかかろうが。


”別れよう”と告げた瞬間、トオルくんと過ごした日々は、リセットされていく。



……私は、どれだけ成長しようがまた、たどたどしい手つきで今度はあの人とのボタンを止めていく。



「……ごめん、トオルくん。私、もう迷わないよ…………」


私も体育館の外に出て、薄衣をまとったような空の青さに目を細める。



たとえ、本人に突き放されようが。


栗木さんに無意味だと言われようが。



「……私は、マサトを助けたい」
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