Beast Love
ひとりになると、病気のことで頭がいっぱいになる。


大事なものを抜き取られたような、胸に空洞が掘られたような、ガランとした虚無感。

命の砂時計がさらさらと落ちていくたびに、自分が自分でなくなっていくような寂しさで、喉が詰まる。



「マサトくーん、遊ぼ?」


病気のことを知らずに俺に近付いてくる女子たちは、そんな言いようのない寂しさを埋めるには都合が良かった。

「ちょっ、マサトくん、ドSだね」

「うるせぇ、黙って抱かれてろよ……」


狭い部屋の中にこもる男女の熱気と、途切れ途切れな吐息。


湿った指先から感じる、温もりが。


爆発しそうなくらいの、鼓動が。


俺に、”生”を教えてくれる。


「はげしっ、すぎ……」

「うるせぇ、……全部、耳障りだ……」


生きていると、息をしていると。


俺はまだ、死んじゃいないと。


歪な繋がりが唯一、そう教えてくれた。
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