Beast Love
肌と肌を触れ合わせることでしか自分が生きていると実感できなくなった俺は、ガソリンスタンドのバイト中に女をナンパしては、家に連れ込んで同じ過ちを繰り返す。
時には彼氏持ちの女に手を出して、男と喧嘩になることもあった。
「テメェ、誰の女に手ぇ出してんだ?!」
深夜の路地裏で、敵意むき出しの男が拳を突き出す。
……だが、死という概念が常に心臓越しにナイフを突き立てる俺に、勝てるヤツなんていなかった。
ボコボコに返り討ちにしてやると、泣き喚きながら走り去っていく男と、そんな男を追いかけていく女。
「マサトくん、やり過ぎだよ! もう私に連絡して来ないで!!」
(……お前から近付いて来たんだろーが)
ヒステリックに喚き散らす女に耳を防ぎながら、路地裏でタバコをふかす。
「……怖いよ、あなた。目が死んでるよ……」
去り際に吐いてきた女の台詞の意味が、理解できなかった。
(死んでる? 俺が? 意味分かんねー)
そうして俺は、また同じ過ちを繰り返していく。
なぁ誰か、俺に……
生きてるって、実感させてくれよ。
深く吐き出した煙は、瞬く星空を白く覆っていく。