Beast Love
「ああ? なんだよ、コレ」

急いで起き上がると、さっきの男子がベンチ横にしゃがみ込み、俺の顔の横に大量の飴玉を置いていた。


「それ、お礼のアメです! お金はないから、そんな物しか渡せないけど……。でも僕、君のおかげで救われたから……」


ぶわりと風が、落ち葉を舞いあげる。


長い前髪から覗いた男子の目には、涙が光っていた。


だが、その表情はとても幸せそうで。


「ありがとう、鳳凰くん!」




バラけた飴玉をひとつ手に取り、包装紙をビリッと破り口に放り込む。



「…………うわ、まっず。俺の嫌いなパイン味じゃん……」


クラスも名前も知らない男子生徒の笑顔を見て、……誰かの役に立つのも悪くないなと思えた。


ほんのささやかな絆を、感じた。



どうせ消える命なら、動かなくなってしまうなら、せめて。



宇佐美先生たちを救って死んでいった誠司さんのように、誰かを救いたいと。


「まっ、これはこれでいいか」


そう、思っちまった。

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