Beast Love

部活のことで苦しんでいた、アキラのことも。


妹の手術で悩んでいた、ヨウのことも。


進路のことで本当の思いを打ち明けられずにいた、トオルのことも。


…………過去に涙し自分に自信が持てずにいた、ノゾミのことも。


この身体が動かなくなる前に、助けてやることができた。


それだけで十分だ、俺がこの世に存在した価値としては。


「マサトー。最近付き合い悪かったのに、また顔出すようになって嬉しいぜ」

「マサトくん、明日の日曜日空いてる? 空いてるなら、シようよ〜」



大切な友人たちを助けて、好きな女も助けて。


十分すぎるだろう、俺の活躍。


これが漫画の世界なら、このまま天に召されてお涙頂戴の拍手喝采。



あとは、ノゾミとトオルのことを応援してやるだけだな。


そして、ノゾミへの想いを……捨てることができれば。


いつ終わってもいい、俺の物語は。



だから…………



「ああ、いいぜ。アンナの家に行っていいか?」



今はまだ、歪な温もりで生きてるってことを、実感させてくれよ。

< 469 / 548 >

この作品をシェア

pagetop