Beast Love
部活のことで苦しんでいた、アキラのことも。
妹の手術で悩んでいた、ヨウのことも。
進路のことで本当の思いを打ち明けられずにいた、トオルのことも。
…………過去に涙し自分に自信が持てずにいた、ノゾミのことも。
この身体が動かなくなる前に、助けてやることができた。
それだけで十分だ、俺がこの世に存在した価値としては。
「マサトー。最近付き合い悪かったのに、また顔出すようになって嬉しいぜ」
「マサトくん、明日の日曜日空いてる? 空いてるなら、シようよ〜」
大切な友人たちを助けて、好きな女も助けて。
十分すぎるだろう、俺の活躍。
これが漫画の世界なら、このまま天に召されてお涙頂戴の拍手喝采。
あとは、ノゾミとトオルのことを応援してやるだけだな。
そして、ノゾミへの想いを……捨てることができれば。
いつ終わってもいい、俺の物語は。
だから…………
「ああ、いいぜ。アンナの家に行っていいか?」
今はまだ、歪な温もりで生きてるってことを、実感させてくれよ。