Beast Love
「……いつだって私は、一緒にいる男を幸せにできた試しがない」


脱力しきった瞳で、カナエさんは写真の中で笑う誠司さんに視線を飛ばす。



「神様ってのはなんで、一度ならず二度までも私から愛しい人を奪うのかね。そんな神様なんて、空に中指突き立ててコッチから願い下げだよ……」


「カナエさん……」


「ごめんね、ノゾミちゃんにこんな話をしてしまって。まぁ、限られた時間の中でウチの馬鹿息子と仲良くしてやって。あいつ、素直じゃないけどさ。よろしく頼むよ」


ついにカナエさんの瞳からは、ひとつ、ふたつ。


小さな水滴が、瞬きと共に床へと落ちる。


悲しくて泣いているというよりは、唇を噛み締め悔し涙を流しているようだった。


息子の命を助けてやりたいけど、助けてやれない。


そんな悔しさが、血の繋がりのない私にさえ伝わってくる。
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