Beast Love

カナエさんの御昼ご飯をご馳走になり、複雑な思いを抱えたまま私は鳳凰家を後にした。


住宅に挟まれた一本道のアスファルトを、歩いていく。


時刻は16時なのに夏とは違い、頭上には茜色した細長い雲が色づいた西空を背に真っ黒なカラスやコウモリが往き来している。


点滅した古い街灯には、蛾が群がっていた。



「……マサト。いま、どこでなにしてるの……?」




日が傾いた肌寒さに、底知れない寂しさと不安が転がり込んでくる。


彼もいま、こんな気持ちなのだろうか?


かけがえのないものが急になくなってしまう恐怖と、どう叫べばいいか不明瞭なほどに暴れ狂う想い。



「一目、会いたい……」


唇が溢れる願いを自然と形どった、その瞬間。



むせ返るほどのタバコと香水の香りを纏った男女と、すれ違う。


「アンナ、くっ付き過ぎ。歩きにくいだろ」


「えー、いいじゃん? マサトくん、明日の朝までいちゃいちゃしようねっ」


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