Beast Love
「だったら、なんだって言うんだよ? まぁ、つるんでる奴らが吸ってるだけで、俺は吸ってねーよ。1年前に、卒業したからな」



偶然にもお揃いだった香水の香りから、煙たい香りに変わっている事実に、虚しさすら覚える。


「副流煙なんて、体に良くないじゃん……」


「は? どこでなにしようが俺の勝手だろ。いちいち俺に構うなよ」


語尾が強くなっていく。



だんだん、彼が苛立ってきているのが分かる。



「なんで、俺が忘れようとしてんのに、目の前にチラチラと現れんだお前は……」


唇を噛み締めて吐息交じりに繋がれた音は、濃紫の空に混ざって溶けていく。



「ねぇ、もう行こ。こんな子に構ってたら、夜が明けちゃうよ」


悪だくみがバレて親に叱られそうな子どものように、栗木さんは早くこの場から離れようとしていた。



……いま、引き止めなければ。


マサトがどこか遠くに行ってしまうような気がして、怖かった。
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