Beast Love
「おー、ありがとな。心配かけて悪かった」
平然を装うが、おふくろには見透かされていたようで。
ノゾミ越しに視線を交わせば、意味深に首を横に振られる。
(そうか、俺の足は、…………)
身体が石のように固まって動かなくなっていく、難病。
俺は自由に好きな場所に行ける移動手段を、失いつつある。
やがて声も失って、好きなやつに好きと言えることもなく……死んでいくのか。
……嗚呼、そのほうが良いかもしれない。
「あのね、私……一晩中考えてたの。あなたを助ける方法…………」
自惚れているわけでもなく、ノゾミの表情を見ていれば嫌というほど分かる。
「でも、まだ見つからないの。だから……もう少しだけ、頑張って生きてほしい」
こいつが、俺のことを好きだということは。
想いが通じあえば、俺は一生償っても償えない深い傷を……ノゾミに追わせちまうかもしれねーんだ。
(……こいつを傷付けてしまうくらいなら、想いを伝えれなかった後悔なんて残ってもいい)
「ああ。なるべく早くしねーと、追いてっちまうかもな?」
「もー! こんな時までいじわる言わないでよ……」
喉元にせり上がる鬱陶しい激情は、胸の苦しみと一緒に深い場所へと追いやった。