Beast Love
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ふたりは残酷になんどでも、恋に落ちてしまうのだろう。
そこに俺の名前はない。
「…………これで、よかったんだ」
天音さんと出会う前の俺は、自分の夢を諦めるようなやつだった。
変わったのは天音さんだけじゃない。
俺も、変わったんだ。
「これはふたりを引き裂いた俺がすべき、ほんの罪滅ぼしなんだ……」
だから、最後までカッコつけさせてくれ。
駄々をこねて張り裂けそうになっている胸を、ニット越しに強く握り締める。
……天音さんと繋いだ手は温かくて、ともに過ごす日々は幸せだった。
ありきたりな言葉だけど、1度も振り返らずに進む背中に、精いっぱいのエールを。
「走れ、天音さん! マサトが待ってるぞ!」