Beast Love

***


ふたりは残酷になんどでも、恋に落ちてしまうのだろう。


そこに俺の名前はない。



「…………これで、よかったんだ」



天音さんと出会う前の俺は、自分の夢を諦めるようなやつだった。


変わったのは天音さんだけじゃない。


俺も、変わったんだ。



「これはふたりを引き裂いた俺がすべき、ほんの罪滅ぼしなんだ……」


だから、最後までカッコつけさせてくれ。



駄々をこねて張り裂けそうになっている胸を、ニット越しに強く握り締める。



……天音さんと繋いだ手は温かくて、ともに過ごす日々は幸せだった。




ありきたりな言葉だけど、1度も振り返らずに進む背中に、精いっぱいのエールを。


「走れ、天音さん! マサトが待ってるぞ!」
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