Beast Love
***



近くにあるスピーカーからは、この施設で最大のイベントを開始するアナウンスが、まったりと響いてくる。


《ただいまより、天空の万華鏡を開催いたします》



心臓が爆発しそうなくらい脈打っても、肺が悲鳴をあげようとも、とにかく走る。


人混みと風にさからい、転げるようにして進んでいく。



必死こいていると、周りの来場者たちが不思議そうに私を眺めていた。


それでも、かまわない。



歩みを止めるものや、遮るものはもうなにもない。


ならば、前へ前へと進むだけだ。



流れていく景色に混ざる街灯の白っぽい光が、私の両側に尾を引いていく。



城前の踊り場には、大勢の人垣ができていた。


(や、やっぱり人が密集してる……っ。この中から、マサトを見つけなきゃ……)


自転車で狭い道を走っていて、後ろから別の自転車が来ているのに、前を歩く歩行者が背後に気づいてくれないくらい焦る。
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