Beast Love
「はぁ、マジで暗闇になんのかよ。これじゃ、ショーが終わるまでここから動けねーじゃん」


すぐ隣に、車椅子に座っている人がいた。


「……トオルのやつ、なにを考えて俺をこんな場所に呼んだんだ……」


耳に馴染んだ憎らしげな声に、落ちこんでいた心は、強い希望の光を掴みあげた。


「ま、マサト!!」


「あ? ポチ?! なんでお前、ここに……」


車椅子に乗っていたのは他の誰でもない、マサトだった。


この前まで歩いていた彼がそれに乗っているということはつまり、病が進行しているという事実。


私たちに残された時間は、少ないということ。


「私、マサトに言いたいことがあって……っ!」


嗚呼、こんな時にまで酸素を欲して喉を詰まらせる自分の体力が、恨めしい。
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