Beast Love
「悪いが、そいつは聞けねぇよ」


すべてを察したマサトが、眉をしかめた。


「トオルになにを吹き込まれたのかは大体察しがつくが、それはお前の本心じゃねーだろ?」

「違う、これは……っ、私が決めた私だけの、大切な気持ちなの!」



もう誤魔化したりしない、見失ったりしない。


「私は、マサトのことが……」


カレイドスコープ城はふたりの想いを乗せて、くるくると回転を始める。



スピーカーから流れる繊細なオルゴール音が、空気を震わせていた。



最新技術によって夜空に映し出される、光の乱反射。


めくるめく、虹彩のシャワー。


見上げれば、うごめく極彩色の渦に飲み込まれる。



「マサトのことが、好きです!!」


誰もが空に描かれる神秘を眺める、こんな夜に。


「好き、大好きでたまらない! なので、明日は……」


私たちは、真剣に互いの顔を見つめ合っている。


「あなたがこの先もずっと生きていけるように、全力であなたの病気と、私も戦います!」


七色に光る表情筋の動きひとつすら、見落としてしまわないように。


「だから、……もうどこにも行かないで。そばにいて、お願い……」
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