Beast Love

やっと届いた指先から、愛が滲み出してしまいそうで。



「俺も好きだ、ノゾミ」


重なった唇からは、頭が沸騰するような熱い刺激が伝わってくる。


やさしく柔らかに、手足まで溶けていくような幸福感が、血液のように流れている。


何年経っても私はきっと、今日という日を忘れないだろう。


「マサト、あのね……。明日、朝の10時に駅前に来てほしいの」

狂おしく愛おしい、こんなにも大切に想える人を初めて抱きしめた日を……私はきっと、一生忘れない。


「そこで見た光景を、しっかりと目に焼きつけて。あなたは、生きなきゃいけない人だってことを」


マサトは困ったようにくしゃりと笑ったあと、「分かったよ」と言って、私の髪に口付けを落とした。



もう、どこにも消えてしまわないように。


強く、強く、彼を抱きしめた。
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