Beast Love
人は愛に生かされ、愛に裏切られ、愛に救われる。



「宇佐美ちゃん、俺……手術受けるわ。手術がもし成功したら、俺は………」



声にならないダサい声を振り絞り、断言する。


「誠司さんと同じ、消防士を目指す。消防士になってさ、俺を助けてくれた人たちの倍の人の命を助ける。そう、決めた」


難しい顔をしていた宇佐美ちゃんの顔が、綻んだ。


「ふふっ。そうね、あなたの将来が楽しみだわ」



「あー! マサト、来とるやん!」


ヨウの声が突き刺さったかと思いきや、頭頂部にガシャンッ!と重量感のあるものが落ちてくる。


「いってぇ!」

「見てみろよ、鳳凰? 俺様の甘いマスクと人望で、これだけの資金を集めてやったぜ?」


憎たらしげに笹原が募金箱を上下に揺らしていた。


殴ってやりたいのは山々だが、グッと堪えてやる。



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