Beast Love

しっとりとした空気が流れる雰囲気をぶち壊したのは、白虎町くんだった。



「ああー、マサト。そない切なそうな顔するなや〜。元気出るように、俺がチューしたろ」


白虎町くんがスマホに唇をブチュッと衝突すれば、スマホの持ち主と画面向こうから悲鳴が上がる。


「うわ、ヨウ! 俺のスマホに何すんだよ!」

「ギャー!! きったねぇ絵面を近づけんじゃねぇ!」


シンクロしているふたりを放置して、横一列に並んだZ組。


そこに騒いでいた面々も合流して在校生や保護者席に向き合い、声を張り上げる。



「俺たちは無事、クラス全員で卒業することができました! 募金活動にご協力、ありがとうございました!」


感謝の叫びで、体育館を埋め尽くす。



「「「ありがとうございましたーっ!!!!」」」



誰も私たちの行動を制止するものはいなかった。



代わりに、割れんばかりの拍手が沸き起こる。
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