Beast Love


***

鍵を開ける音に、全身がピクリと反応する。

数秒後、ガチャリと開いたドアの隙間から旦那サマが姿を現した。

「ノゾミ、ただいま〜」

「おかえりーっ!」


マサトの声を聞くだけで、さっきまで介護福祉士としておじいちゃんおばあちゃん達の為に夜通し働いていた疲れなんて、吹き飛んでしまった。



ご主人の帰りを喜ぶ飼い犬の如く、バタバタと廊下を走って玄関に佇む愛する人を抱き締める。


「おー、朝から元気だなぁ。なに? 襲って欲しいって?」

「いや、そんなことは一言も言ってません」


一言も言ってないと主張しているにも関わらず、太く逞しい腕にヒョイと抱えられた身体は有無を言わさずソファに運ばれる。


(……抱き着かなければ良かった)、なんて後悔しても遅い。


ふたり並んでソファに座れば、自然と唇が重なる。


汗で湿った肌と肌が重なり、熱を持つ。


「……ちょっ、マサト、」
「もうちょいだけ、……」

互いに夜勤明けなんて忘れて、私たちはゆっくりとお互いの体温の中に落ちていく。



言語化できない感情が、途切れる呼吸に混じって吐き出される。


「マサト……」
「あー、やべぇ。俺、お前のこと超好きだわ……」


指と指を絡め合い、いくつものエネルギーがひとつになるために清らかな流れを組む。



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