Beast Love
「お前さ、」

視線を外しながら口を開く猛獣に、ビクリと身構える。


「はい、なんでしょうか?」

「行きたい場所とか、ねーのかよ」

「…………え?」


マサトは大きな手で、パンフレットを指差していた。

「此処から動かないと、入場料がもったいねぇだろうが。付き合ってやるから、どこか行きたい場所あったら言えよ」


デ、デレた……?


とか思ったのは束の間、彼の口からは恨みを帯びた声音で、「ヨウの奴、俺への嫌がらせでワザとアキラと一緒にはぐれやがったな。後でぶっ殺す」っと物騒な単語が飛び出している。


「此処にいても仕方ねぇだろ、とりあえず動くぞ」

「いや、いいよ。ふたりきりとか、気まずいし」


ポロリと本音を零せば、マサトは数秒間固まった後、ぶはっと吹き出した。



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