Beast Love
「あっという間だったな。っつか結局俺ら、誰とも合流してねぇし。ま、ここまできたら、どーでもいいか」



頭上に広がる橙色した夕焼け空と、何重にも重なり合う鐘の音が、夕陽に照らされる私たちを優しく包み込む。


「……もう、帰らなきゃ」



誰かの幸せを現すかのような『カレイドスコープ』の鐘の音は、どこか協会の鐘の音ように聞こえた。

楽しかった時間が、黄金の空に返ってゆく。



「あ? もう帰んの? 7時になったら『カレイドスコープ』の野外ショーが始まるっつーのに」


腕に乗せていた顎を離して隣を見ると、少し驚いた顔したマサトが、スマホから視線を外して私を見ていた。

「え、まぁ、うん。私の家、今おばあちゃんだけだから」

なんで、帰るって言っただけでそんな顔してるの?

もしかして野外ショーを一緒に見るつもりでいてくれたの?


予想外なマサトの反応に対してそう言いそうになる口をグッと結び直し、私は彼に経緯を説明する。


「実は私、桜島高校に通うためにおばあちゃんの家に居候させてもらってるんだ。だからあんまり遅くなったらおばあちゃんが心配するし、そろそろ帰るよ」
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