Beast Love
背中を柵にくっ付けて体重を預けたままのマサトに、まぁ一応、ほんのちょこっとの感謝の気持ちを、念の為に早口で告げた。



「今日は無理矢理ふたりきりにさせられたのに、嫌な顔せずに一緒に楽しんでくれてありがとう。たくさん笑えて、楽しかったよ。じゃぁ、また月曜日に学校で」


顔を見るのはなんだか恥ずかしくって、振り返らずにそのまま右足を出す。


次に左足、また右足。


彼から遠ざかるに連れて、なぜか心が虚しくなっていく。


友人と来ている学生やカップルや家族連れの人混みを避け、ひとりで出口に近付くにつれて、どんどん大きくなるその気持ち。


どんな顔をして歩けば良いのか、分からない。


フッと売店のガラス窓に映る自分の姿を見て、ようやく分かった。


(…………嗚呼、そうか。楽しかった時間が終わって、”寂しい”んだ、私)


我ながら、変だなぁと思う。


どうして”今もっとも憎たらしいランキング1位”の人にサヨナラを告げただけで、こんなに切なくなっているんだろう、って。
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