Beast Love
藍色に混じって楽しそうに煌めく瞳に捉われて、動けない。


けれど、瞳の形は楽しそうなのにその更に奥、彼の内側からはどこかそのまま暗闇に消えていってしまいそうな儚さが、漂っていた。


謎めいた儚さの正体を知ろうと一歩踏み込めば、掴み所のない雲みたいに、どこかに消えていきそうな。



得体の知れない不安を拭い去るように、私は震えた声を上げる。


「なっ、何言ってるの。いきなりそんなこと言うとか……どうかしちゃった? さぁ、つまんない事言ってないで、さっさと家まで送ってよ、ご主人様」


挑発的な台詞を吐いて見せると、夕暮れの闇にニカッと白い歯が光った。


「うるせぇ、きゃんきゃん喚くなよ。ペットの分際で」


いつもの調子に戻ったマサトに、ホッと胸を撫で下ろす。


(……ん? なんで安心してるんだ、私)
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