Beast Love
***

無事家路に着いた私は、ぶっきらぼうに片手を上げてすぐに玄関から離れたマサトに礼を告げ、一戸建ての玄関をガラガラッと勢い良く開けた。


「ただいまー」


靴を脱いでいると、リビングからひょこひょことおばあちゃんがお出迎えをしに出て来てくれた。


「おかえり、ノゾミ。もうすぐ晩ごはんが出来上がるから、先に風呂に入っといで」


大和撫子を体現しているお淑やかで優しいおばあちゃんは、私の自慢のおばあちゃんである。


「うん、ありがとう。先にお風呂行ってくるね」


「ノゾミ、今日はまた可愛らしいおべべ着てぇ。好きな男の子とでも会ってたのかい?」

そして、ふんわりした雰囲気からは想像出来ぬ程の、鋭い感の持ち主である。


「へっ?! いや、今日は友だちと遊ぶって朝に言ったじゃん」

「そうかいそうかい。楽しかったみたいで、なによりなにより」

「もー、おばあちゃん。本当に違うんだってば」


おばあちゃんからの追求から逃げるようにして階段を駆け上がり、借りている一室の畳に、さっそく寝転がる。


「あー。楽しかったけど、疲れたぁ」


疲労と安心感で、畳と身体が一体化していきそうだ。
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