Beast Love
やがて、マサトと共に教室に姿を現した玄武くん。


朝のホームルーム開始のチャイムが鳴るまでは、あと1分もない。

(う、上手く渡せるかな……ってか、なんでいつも登校が遅刻ギリギリなのよーっ!)


まるで自分のラブレターを渡すみたいな初々しい緊張感を抱きながら、机に鞄を置いた彼の元へと駆け寄る。



「あ、あのっ、玄武くん!」

「ん? どうしたの」


ゆっくりと私を見る優しそうな眼差しに、キュンとしていると、横から茶々を入れてくる邪魔な存在がいた。



「ああ? ポチ公、アキラにラブレター渡そうってか?」


わざわざ手を後ろに回して本人から見えないようにしていたのに、マサトがそれを台無しにする。


「ちょっ、 勝手に取らないでよっ 」


大事な手紙を奪おうとしてくる巨漢に対して必死に抵抗していると、宇佐美先生がクネクネと腰を揺らしながら教室に入って来てしまった。


「はぁ〜い、あなた達っ。 席に着きなさぁ〜い」


(くっそー! 相変わらず邪魔しかして来ないんだから、この暴君は!)

なんて恨めしそうにしつつ、大人しく席に戻ろうとすると、背後から玄武くんが袖口をツイツイッと引っ張ってきた。


「天音さん。昼休みに、屋上に上がってきて。さっきの続き、ふたりきりで聞くからさ」


マサトを嫌っている私に配慮してか、そんな提案をしてくれる彼の優しさに有り難みを感じつつ、小さく頷く。


「玄武くん、ありがとう。じゃぁまた、お昼休みにお願いします」
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