Liebe
家事は大体済ませてしまった。
暗い窓の外を見ながら、晴れたら外へ出てみようと考える。
ウィリアムのように仕事があるわけでもないのに家にずっと引きこもっているのは気分が悪くなってしまいそうだ。
ここへやってきたばかりの時と違い、不安よりも好奇心が勝っていた。
窓から見る景色だけでも、この街は美しいことが分かる。
探検してみたい。
数日の間にその思いは大きくなっていた。
それほど不安を抱いていないのは、きっとアンナが自分にエリーという名前を付けたからだ。
存在する意味が、理由が、できたような気がしたのだ。
しかしウィリアムとはどう関わっていったらいいかわからない。
仲良く出来たら嬉しいが、どうすれば仲良くなれるのかが全くもってわからないのだ。
「まぁ、いっか」
小さく呟く。
迷惑をかけないようにしてこれからも一緒に暮らしていったら、きっと仲良くなれるチャンスはたくさんあるだろう。
こんな雨の降る日に悩むことはない。
そう自己完結し、夕食に何を作るかということを考え始める。
しかし先ほどから雨音しかしない。
ウィリアムの書斎からダイニングやキッチンへ行くには、エリーの部屋の前を通る必要がある。
部屋に入ってから何の音も聞いていないということは、まだ部屋にこもっているのだろう。
このままだときっと彼は何も食べずに今日という日を終える。
食べたとしても、夜の遅い時間にエリーの作った昼食を食べることになるだろう。
そう考えると、エリーは夕食を作らなくてもよいのではないかと思ってしまう。
自分一人のためだけに作る料理ほど味気ないものはない。
「じゃあ、いっか」
再び呟く。
雨はいつまで待っても止む気配がしない。
明日にでも外へ出てみたいと思っていたが、もしかしたらまた延期になるかも知れない。
そんなことを考えてまた少し憂鬱になる。
雨は先ほどよりも激しさが増している気がする。ぼーっと窓の外を眺め続けた。