Liebe
その本を拾い、エリーはタイトルを読み上げた。
「『空の散歩』……」
リヒトも本を覗きこんでいる。
文字は読めるのだろうか。
エリーは興奮に頬を赤らめながら、石の上に腰を下ろした。
リヒトもエリーの肩の上に乗っている。
しかしエリーは本を開こうとして、動きを止めた。
――本当にこれでいいのだろうか。
普通に売られている本なのだから、こうして偶然読む機会があっても怒ることはないだろう。
しかしウィリアムは知人や友人に本を見せようとしないとのことだった。
エリーに言われた時も即座に断っていた。
それなのに、こうして偶然を装って無理に本を読んで、エリーは楽しめるだろうか。
何の罪悪感もなくウィリアムに感想を伝えることはできるだろうか。
動きを止めたまま動こうとしないエリーを見て、リヒトは首を傾げる。
早く読もうよ、とでも言っているようだ。
しかしエリーはページを捲らず、本の表紙を撫でた。
「こんなの、よくないよね」
エリーはウィリアムにちゃんと許可を取ってから読もうと決めた。
その思いと共に立ち上がり、エリーは図書館へと戻って行く。