Liebe
「……あ、あの、これって」
「俺の書いた本だ」
「え、でも、必要ないって」
「どうせあの手この手で読もうとするだろう、お前は」
全てをわかっているような言い方をして、ウィリアムはため息をつく。
エリーは胸の高鳴りを感じて、その本を手に取った。
「『妖精と少女』……」
「……変、か」
「え、何がですか?」
エリーの言葉にウィリアムはわずかに微笑みながら首を横に振った。
それにしても顔色があまりよくないのは、気のせいだろうか。
「……いつも家事を任せているから、その礼だ」
「……はい! ありがとうございます」
ウィリアムの言葉にエリーが笑顔で返答する。
その勢いにウィリアムは再び眉を顰めると、今一度水を飲みにキッチンへ向かった。
タイトルからしてきっとファンタジー物なのだろう。
エリーはリヒトと共に読もうと決めて、大切そうに本を胸に抱いた。