Liebe




ふと聞こえた足音にエリーはハッとする。
ウィリアムだ。

きっとお腹が空いて今から昼食を食べるのだろう。きっとそうだ。
そう考えてわずかに頬がゆるむ。

先程まで落ち込んでいた気持ちが浮上していく。我ながら単純だとエリーは思った。


雨が降っているからなんだというのだ。
明日も雨が降っていたら、雨の降るこの街の景色を楽しみながら出かけたらいい。

ウィリアムが夕食を食べてくれる可能性が少しでもあるなら、用意するだけしてみればいい。

そんなことを考えていたら、窓の外が明るくなってきた。
雨が止んできたのだ。まるで空に応援されているように感じて、エリーはダイニングへ向かった。

そこには、珈琲を飲んでいるウィリアムがいた。
用意していた昼食はもう既に片付けられているようだ。

――食べてくれたんだ。

そう考えたら嬉しくなって、思わず笑いかける。

< 11 / 305 >

この作品をシェア

pagetop