Liebe


鈴の音がしたのは、その時だった。

エリーはハッとしたように音のした方向を見た。
音がしたのは、自分の真後ろだったのだ。

そこには追いかけてきた真っ白な綺麗な猫の姿があった。
こちらをじっと見ていたその猫は、何事もなかったかのようにエリーに背を向けて歩き出す。
エリーはつられるようにしてその猫の姿を追いかけた。


歩いていくうちに、音が蘇ってくる。
人の声がするのだ。

思わず猫から目を離して顔を上げる。
エリーの見知った街や人々の姿が見えた。

いつの間に帰ってきたのだろう。
エリーはそんなことを思いながら、再び猫の姿に視線を移す。

しかしもうそこに猫の姿はなかった。

エリーは少し残念に思いながら、近くにあった目的の店で買い物をした。
何か色々忘れていた気がするが、何を買おうとしていたのかはしっかりと覚えているようだ。


買い物を済ませ、リヒトを迎えに行き、エリーは家へと帰って行く。
もうあの白い猫の姿を見ることはなかった。

なんだか不思議な経験をしたな、と思いながら、エリーは玄関の扉を開ける。



鈴の音が聞こえた気がした。

< 115 / 305 >

この作品をシェア

pagetop