Liebe
鈴の音がしたのは、その時だった。
エリーはハッとしたように音のした方向を見た。
音がしたのは、自分の真後ろだったのだ。
そこには追いかけてきた真っ白な綺麗な猫の姿があった。
こちらをじっと見ていたその猫は、何事もなかったかのようにエリーに背を向けて歩き出す。
エリーはつられるようにしてその猫の姿を追いかけた。
歩いていくうちに、音が蘇ってくる。
人の声がするのだ。
思わず猫から目を離して顔を上げる。
エリーの見知った街や人々の姿が見えた。
いつの間に帰ってきたのだろう。
エリーはそんなことを思いながら、再び猫の姿に視線を移す。
しかしもうそこに猫の姿はなかった。
エリーは少し残念に思いながら、近くにあった目的の店で買い物をした。
何か色々忘れていた気がするが、何を買おうとしていたのかはしっかりと覚えているようだ。
買い物を済ませ、リヒトを迎えに行き、エリーは家へと帰って行く。
もうあの白い猫の姿を見ることはなかった。
なんだか不思議な経験をしたな、と思いながら、エリーは玄関の扉を開ける。
鈴の音が聞こえた気がした。