Liebe
第十八話「海の記憶」
カーテンの隙間から朝陽が覗く。
エリーは眠そうに目を擦りながら、身体を起こす。
枕にはリヒトが気持ちよさそうに眠っている姿。そんなリヒトを起こさないようにして、エリーは窓を開けた。
爽やかな風がエリーの髪をなびかせる。
まだ街には人の気配がしない。きっとまだ早い時間なのだろう。
しかしエリーは再び寝ようとせず、どこか上の空で着替えた。
着たのは、クリーム色のワンピース。後ろの腰のあたりにリボンが付いている。
そのワンピースは、エリーが海辺で倒れていた時に着ていたもの、らしい。アンナが言っていた。
風の都にやってきてからはまだ一度も着ていなかった。
エリーは亜麻色の髪を梳かし、部屋を出た。リヒトは穏やかな表情で眠っている。
ウィリアムもまだ眠っているかも知れない。エリーはなるべく音を立てずに階段を下りる。
そして玄関の扉を開け、外へ出た。
暖かい日差しと共に、少し冷たい風が当たる。
エリーは玄関を閉め、まだ誰も歩いていない街を進んでいく。
そして辿り着いたのは、海だ。