Liebe
挨拶を交わし、リートが去っていく。
その後ろ姿をエリーが見送っていると、ダニエルに荷物を預けるウィリアムの姿が目に入った。
「俺も行く」
「はいはい。荷物は部屋に置いておくよ」
その光景を見て、エリーは思わず声を掛ける。
「どちらへ行かれるんですか?」
「ちょっと街の方にな」
「……あの」
すぐにでも行ってしまいそうな雰囲気のウィリアムにエリーは不安そうな目をして引きとめる。
リヒトは不思議そうにそんなエリーを見下ろしている。
一緒に行きたい。
しかしわざわざ別行動をしようとしているウィリアムは一人で行動をしたいのかも知れない。
エリーは言葉を続けることができなかった。
「……一緒に来るか」
その言葉に顔を上げる。
ウィリアムがどこか柔らかい表情でエリーを見つめている。エリーは笑顔で頷いた。
「行きたいです!」
「あら、フローライト家は協調性がないわね」
アンナが呆れたようにそう言い、エリーに手を差し出す。
「あんたの荷物も預かっておくわ」
「ありがとうございます、アンナさん」
荷物を預け、一足早く宿を去るウィリアムの背中を急いで追いかける。
いつもと違う場所で、いつもと違う様子のウィリアムと、いつものように並んで歩く。
エリーは頬を緩ませながら、隣のウィリアムを見上げる。
ウィリアムもどこか楽しそうに目を細めている。