Liebe
第二十二話「帝都のお嬢様」
その日のヴィルベルは、いつもより騒がしく感じられた。
エリーは朝食を用意してリヒトと共に食べ、ウィリアムに声を掛けてから掃除や洗濯を始めていた。
いつも通りの行動だ。
午後になると夕飯の買い出しをするため、街に出る。
これもいつも通りだ。
しかしいつもと違うのは、街が賑やかだという一点。
街を歩く人の数も、いつもより多く感じる。
エリーは思わずリヒトと顔を見合わせる。
好奇心を抑えられず、エリーは誰かに聞いてみることにした。
「あの、今日、なにかあるのでしょうか」
そう尋ねた相手は、いつも挨拶を交わすお店の夫人。
良いタイミングでお店の傍らに立っていたのだ。
「あら、エリーちゃんじゃない」
「こんにちは」
「こんにちは。今日はねぇ、帝都からお嬢様が来てるんだってさ」
「帝都からお嬢様……ですか?」
「そうそう。なんでもこのヴィルベルに新しく店を出すとか出さないとか」
「そうだったんですね」
「ま、気になるなら見に行ってみな。駅の近くだったはずだよ」
「……そうですね、行ってみようと思います。ありがとうございました」
「あいよ。ウィルによろしくね」
「はい!」
エリーはリヒトと一緒に駅の方へ向かうことにした。
時間ならまだ大丈夫。買い物は後回しだ。