Liebe
「人に名前を尋ねる時は自分から名乗るものではなくって?」
「そ、そうですよね。私はエリーです」
「私はリザよ。あなたの見ていたこの店のオーナなの」
「……あなたが?」
「何よ、文句でもあるっていうの?」
「い、いえ……」
少女、リザの言葉にエリーは狼狽える。
帝都のお嬢様というのはこのリザという少女で間違いはなさそうだが、思っていたよりもずっと幼く見える。
カイと同じパターンだろうかと考えてみるが、それは考えにくい。
「……あなたの想像している通りの年齢よ。私はまだ学生なの」
少しイラついたようにリザが言う。
気分を害してしまったのは明らかだ。エリーは慌てたように謝る。
「ごめんなさい。驚いてしまって」
「いいわよ。いい加減慣れたわ」
そう言って大きくため息をつく。
「大体、お父様もお父様よ。学生のうちから店をやらせるなんて」
突然の愚痴にエリーは困ったように眉を下げる。
それに気が付いたのか、リザが気を取り直すように改めて腕を組む。
「ねぇ、あなた。どこかでお会いしたことはないかしら?」
リザが睨むような視線でエリーを見上げる。
エリーは更に困ったような顔をしている。
リヒトはべーっと舌を出して威嚇した。
「……ない、と思います」
自信無さそうに答えるエリー。
それもそうだろう。エリーには記憶がないのだ。
まぁいいわ、とリザは気にしてなさそうに髪を揺らした。