Liebe
「きゃっ」
突然ぐいっと腕を引っ張られて、思わず声を上げる。
引っ張られた勢いで何かにぶつかる。
そして身体全体が温かさに包まれた。
エリーが顔を上げようとすると、それをさせないかのように強く抱きしめられる。
顔を埋めたエリーは、この温かさの主の匂いを知っていた。
――ウィリアムだ。
「あ、あの、ウィリアムさ……」
「よかった」
ウィリアムの声がわずかに震えていることに気が付く。
聞いたことのない声色に、エリーは申し訳なさで胸がいっぱいになる。
おそるおそる腕をウィリアムの背中に回す。
「……ごめんなさい」
ウィリアムは息を切らしていた。
腕の中の心地よい温かさも、走って来てくれたことで体温が上がっているのだろう。
先程までの孤独感が一気に解消されたような感覚。
堪えていた涙は、頬を伝ってウィリアムの服に滲んでいった。
妖精の少年は、どこか安心したような、気まずいような表情をして後ろで二人を見守っていた。