Liebe
「アンナさんはどうされたんですか?」
エリーは何事もなかったかのように尋ねる。
「……用事を思い出したらしい」
ウィリアムもまた、何事もなかったかのように答えた。
食事の準備をして、アンナの作ったであろう夕食を二人で食べる。
いつもより会話は少ない。
「おい」
「はい」
「すまないが、それを取ってくれないか」
「あ、これですか? どうぞ」
「ありがとう」
なんてことのない会話。
「あの、ウィリアムさん」
「なんだ」
「……」
黙り込むエリーに、ウィリアムは不思議そうな顔をする。
しかしエリーはずっと気になっていたことがある。
それは、ウィリアムが一度もエリーの名を呼んだことがないということだ。
「……いえ、あの、私、少し気分が悪いみたいで」
「大丈夫か」
「……ごめんなさい。部屋に戻りますね」
そう言ってエリーは早足で部屋に戻る。
いつもより早い帰還に、リヒトは驚いたような顔でエリーを見る。
「……どうしよう」
エリーの手が震えている。
リヒトはエリーを慰めるように、周りを飛び回る。
エリーはおもむろに窓を開けた。